ママ

『だれが こまどり ころしたの?』

マザーグースのうたが聞こえる




誰が私≠殺したの?

うん
教えてあげる

それはね、ママ




遺体はどこに?

そんなのないよ



だって死んでしまったのは
私の中の本当の私


ママの理想は強いひと
まともなひと
きちんと、生きて、いけるひと


でも私には出来ないの
ごめんね、理想になれなくて

何も感じず自分を捨てて
この世を渡っていくのなら

生きていないのと同じこと


それでもママは私≠殺す
世間はこうだ、と理屈をこねて

私に楯突く術はなく
虚ろな瞳で頭を垂れる



もしも奇跡が起こったら
今度はママにこう言うの
マザーグースの言葉を借りて



 『私は海へ 船はない
  10シリングで白いめくらの馬を買い
  背中に飛び乗り たちまち駆け去る
  サリー、わたしの母さんに言って
  もう二度とうちへは 戻らないって』





【文中引用】
谷川俊太郎訳「マザーグースのうた」草思社より
(作者改変)